アルツハイマー型認知症
治療法が模索されている認知症(B)が問題となりますので、今回はアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)(AD):64歳以下の発病と⑧アルツハイマー型老年認知症(SDAT):65歳以上での発病の病因と本人やご家族の気づく症状を概説しましょう。今日では両者併せてアルツハイマー型認知症またはアルツハイマー病と称します。
病因:不明。アポリポ蛋白E4の対立遺伝子を有する人に生じやすく、E2を有している人は生じにくいと言われています。アミロイド前駆蛋白、presenilin-1,2,の保有者に生じく、40歳以上のダウン症の人にはADを生じやすいとされています。マイネルト基底核、青斑核(locus coeruleus)などの神経細胞外にβシーツ構造のβ蛋白からなるアミロイド斑がび慢性あるいは塊として見られ、神経細胞内には神経原線維変化(NFTs: Neurofibrillary tangles)があり、微小管結合tau蛋白があり過リン酸化しています。電子顕微鏡では螺旋状の対になったフィラメントが見られます。ADでは大脳皮質全体に広がっていて海馬萎縮もシルビウス溝開大も認められます。SDATでは海馬中心に萎縮が見られます。海馬と内側側頭葉の萎縮はVSRADで確認可能です。
機序:可溶性Aβオリゴマーがtoxicになり、tau蛋白の過リン酸化を生じ、ニューロンの機能低下と変性を生じる。
中核症状:ADは緩徐進行性の近時記憶障害、軽度注意障害、実行機能障害、視空間認知障害、構成障害、言語障害(失語)、→妄想、不安焦燥(sundowning)、うつ、自発性低下、睡眠・覚醒のサイクル障害も生じる。
・SDATは“もの忘れ”が主。ADには失語、失行、失認という皮質症状がある。
・非常に早期に嗅覚障害を生じる。
・対人接触性は保たれているが、自信のない、戸惑い、答えるときに家族を振り返る現象がある。言い訳したりする。人前で恥をかきたくないという思いがある。家族との関係性が困難になっていることがある。本人の思いや苦悩を理解すること。
・記憶障害はエピソード記憶障害→意味記憶障害→近時記憶障害→作業記憶障害・予定記憶障害あるも手続き記憶残っている。同じことを何度も尋ねる。物を置き忘れて探す。買い物で同じものを買ってくる。料理のメニューが同じになる。伝言ができない。遠隔記憶も後に障害される。
・見当職障害は時間、場所の順で障害される。
・実行機能障害:物事の段取りが悪くなる。
・空間認知障害:構成失行、椅子にうまく座れないoculomotor apraxia。両側頭頂葉後部で後頭葉に接する部位の障害でBalint症候群:着衣障害、視覚失調と同時失認を生じる。右優位障害。左半側空間無視も生じることがある。
・言語障害:固有名詞→普通名詞→あれ、それの代名詞使用(健忘失語:失名詞失語→超皮質性感覚性失語)→発話量減少→無言になる。吃音を呈する場合もある。書字障害特に漢字の健忘失語は早期から認められる。左大脳半球優位の障害。Logopenic progressive aphasia:進行性失語症:「言いたい言葉がでてこない」を呈することもある。
・計算障害:作業記憶や注意障害が関与している。
・行為障害・巧緻運動障害:調理器やテレビのリモコンが使えなくなる。不器用になる。
・人物誤認は関係性否認の症状(強く注意された後)のことがある。10%にCapgras syndromeを生じる。
・鏡に映った自分としゃべったり罵倒したりテレビの画面としゃべる。
・前頭葉症状として病職欠如や脱抑制的行動。まれに後部皮質萎縮では失毒、視覚失認、Balint症候群、視野狭窄を生じる。
・末期には寡動、無言、筋強剛、寝たきり。ミオクローヌスもみられる。感染症、肺梗塞、心停止、栄養不良は8-10年で生じる。
周辺症状:行動・心理症状(BPSD)
・うつ、意欲低下:人前で恥をかきたくない、うまくできなくなったからが多い。
・物盗られ妄想が多い。(置き場所、隠し場所を忘れる)嫉妬妄想は男女とくに高齢女性に多い。人物誤認妄想はADよりもDLBに多い。
・易怒性、焦燥感、テイシュペーパーなどを集めたりする異常収集行為は記憶や能力低下が背景にあり、楽しみが見出せない場合がある。徘徊も原因はさまざまである。
検査:髄液中のAβ/tau比が低下している。PIB画像でアミロイド沈着がわかりますが、検査は自費で、1回50万円かかるそうです。